【観戦レビュー】U-12ジュニアサッカーワールドチャレンジって、どんな大会?<後半戦>

U-12ジュニアサッカーワールドチャレンジ2019のレポート、1日目後半戦です。

お昼の休憩時間を使い、FCバルセロナの初戦が行われる万博記念競技場まで移動しました。

メイン会場から徒歩で20分くらい移動し、午後3時半から6試合を観戦しました。

 

別会場の万博記念競技場は、近くにコンビニや飲食店がないためか、観客席にほとんど人影はありませんでした。

本当にこの会場であっているのかなと思いながら待っていると、バルセロナのバスが到着し選手が会場に入ってきました。

【観戦レビュー】U-12ジュニアサッカーワールドチャレンジって、どんな大会?<前半戦>

万博記念競技場は、ガンバ大阪の旧ホームスタジアムで、ピッチは天然芝になっています。

グラウンドキーパーが芝の手入れをしている横で、異国のピッチを確かめるように、全員で円になってボールを蹴り合っていました。

芝生に触れて喜んだり、パンやお菓子を取り合ったり、パッチンバンドで遊んだりしている様は、日本の小学生と変わりありません。

ひとつ違うとすると、彼らはバルサの選手であることを自覚しているので、写真や握手を求められても当然のように応えていきます。

大舞台で緊張せずに自分の実力を発揮していくには、注目されることを数多く経験していくことが大切なのかもしれません。

時間が近付くにつれ人が集まり始め、いつの間にか通路には沢山のビデオカメラが並んでいました。

 

観戦6試合目 FCバルセロナ vs ベガルタ仙台ジュニア


6試合目は、三連覇中のFCバルセロナ対、Jクラブの北日本予選を勝ち抜いたベガルタ仙台ジュニアの対戦。

バルセロナは24人選手登録されいているため、随所で交代が行われていました。

どの選手がレギュラーかはわかりませんが、いい意味で突出した選手がいなかったチームでした。

印象的だったのは、ナイジェリア選抜と同様にディフェンスラインがしっかりしており、1発でゴールチャンスになるパスが出ていました。

スピードのある選手と正確なフィードを組み合わせて、少ない人数でゴールに向かうことで、効率の良い攻撃になっています。

一方のベガルタ仙台は、それほど緊張した様子もなく、バルサのパスワークに対応していたと思います。

決定機と言えるものはそれほど多くありませんでしたが、試合が進むにつれてバルサがボールを支配するようになっていきました。

 

観戦7試合目 JFAトレセン大阪 U-12 vs 大和ハウスFUTURES


7試合目は、昨年ベスト4のJFAトレセン大阪対、一般公募からセレクションで選ばれた大和ハウスFUTURESの対戦。

トレセン大阪は地元開催かつ主催者側でもあるので、この大会にかける思いが伝わってきました。

スピードのある選手やキック力のある選手が多く、途中出場した選手が積極的にシュートを打っていました。

 

一方の大和ハウスFUTURESは、大会スポンサーである大和ハウス枠から出場するチームです。

全国4か所で行われた選抜セレクションから選ばれており、いわば全国から集まった猛者による1大会限りのチームです。

初戦であったためか連携ミスが続くシーンもありましたが、個人の技術が高く完成度の高いチームになっていたように思います。

元日本代表の岩政大樹さんが監督を努めており、あまり指示を出さずに選手が本来持っている力を活かした試合をしていました。

 

観戦8試合目 広州恒大蹴球学校 U-12 vs 栃木SC U-12


8試合目は、ACLで馴染みのある広州恒大蹴球学校 U-12対、昨年も出場した栃木SCの対戦。

広州恒大は『量は質を駆逐する』という言葉にふさわしい世界規模のチーム。

中国の広東省清遠市にある世界最大級のフットボールの学校です。

日本でいう小学3年生から高校3年生までを対象に約2800人もの生徒を抱え、50面というピッチ数を保有し、日々質の高いトレーニングを行っています。

※大会パンフレットより抜粋

プロ選手と遜色ない体格の選手がずらりと並ぶ光景を見ると、間違いなく中国は日本のライバル国になると思われます。

一方の栃木SCは、春に行われたアイりスオーヤマプレミアリーグチャンピオンシップで優勝し、出場を決めたチームです。

5年生も入っており小柄な選手が多かったですが、体格で勝る広州恒大に対し、全員がハードワークを行って粘り強く戦っていました。

友達や親子で一緒にじわれる名作映画『GAMBA ガンバと仲間たち』

 

観戦9試合目 MONGO FOOTBALL vs FC Ants


9試合目は、オーストラリア代表のMONGO FOOTBALL対、街クラブ予選の山口大会を勝ち上がったFC Antsの対戦。

MONGO FOOTBALLは始めてアジアの大会に参加するとのことで、多くの保護者が観戦に来ていました。

この観戦で感じたのは、国が違うと保護者の観戦方法も違うということです。

モンゴフットボールの保護者は、自チームのプレーはもちろん、相手チームの良いプレーに対しても拍手や声援を掛けていました。

日本では相手チームのプレーに拍手をすることはあまりないので、いい光景だなと思いました。

スピードのある女子選手が、サイドのスペースからドリブルで積極的に仕掛けていく姿が印象的でした。

 

FC Antsは熊本の強豪チーム。昨年に続き2年連続出場しています。

九州は数多くのJリーガーを輩出しており、力のあるチームが多い地域です。

隣の宮崎県には、今年の全国中学校サッカー大会で優勝した日章学園中学があります。

厳しい予選を勝ち抜いてきただけあり、球際が強く攻守の切り替えが早かったです。

 

観戦10試合目 トヨタ・タイランド vs レノファ山口FC U-12


10試合目は、タイ代表のトヨタ・タイランド対、Jクラブの西日本予選を勝ち上がったレノファ山口FCの対戦。

タイ人Jリーガーの活躍や、タイのサッカーが熱いという話は聞いていたため、観るのを楽しみにしていた対戦でした。

 

タイのジュニアチームを見るのは初めてだったのですが、「とてもレベルが高い」というのが率直な感想です。

特にフォワードの二人は、大きな体格ながら足元の技術が高く、ボールを受けるポジションがとてもよかったです。

日本からも多くの指導者が派遣されているようで、近い未来日本のライバルになって行く国になると言えます。

タイの選手は途中交代で入場・退場する時に、手を合わせてお辞儀するのが決まりになっているのがgoodでした。

 

レノファ山口は、ヴィッセル神戸やV・ファーレン長崎を予選で下して出場を決めました。

スタンドからバルサの選手に声を掛けてコミュニケーションを取ったりと、明るい雰囲気のチームでした。

雨の中での試合であったため、普段練習しているようなパスが繋がりにくく、厚みのあるタイ代表の攻撃に苦戦していたようでした。

ディフェンスの背後を取られることが多かったので、なんとか修正しようと奮闘している様子が伺えました。

 

観戦11試合目 東京ヴェルディジュニア vs DREAM FC


最後の11試合目は、育成に定評のある東京ヴェルディジュニア対、街クラブなら会場代表のDREAM FC。

ヴェルディはディフェンスとフォワードに長身の選手がいて、その二人が攻撃のホットラインになっています。

中央を起点にしながら、裏に抜けてくる選手へ際どいパスが何本も出ていました。

DREAM FCは、関西の大会で必ずと言っていいほど上位に入ってくる強豪チームです。

地元だけあり、観客席にたくさんの保護者や仲間が応援に来ていました。

個人技に長けていて、スピードとテクニックのあるトップの3人が、相手陣地をかき回しながら攻撃を仕掛けていきます。

何度が惜しいチャンスはつくるものの、結局両者ともに得点を取ることはできませんでした。

 

味方を狙ったパスはもはや通用しない


海外チームと国内チームで一番差を感じたのは、海外チームの方がスペースに出すパスが上手であるということです。

タイ代表vsレノファ山口戦では、サイド攻撃を仕掛けるシーンが両チームあったのですが、レノファは味方に向かってパスを出すのでなかなか繋がりません。

一方のタイ代表は、ディフェンスとキーパーの間にボールを入れてくるので、フリーでシュートを打てていました。

これは日本のチーム全体に言えることですが、味方ではなくスペースに出すパスを使えない選手が多かったです。

おそらく「味方の足元に出すこと」が正解となっており、それ以外がイメージできないからだと思います。

そのため、足の長い海外の選手にパスコースを読まれてカットされ、カウンターを受けるシーンが数多くありました。

また、圧倒的にキック力が足りていないことも、攻撃のバリエーションが乏しくなる要因であると感じました。

 

実際にやってみると分かるのですが、誰もいないところにパスをだすのは、想像以上に難しくまた勇気がいります。

方向や強さだけでなく、ボールの回転やディフェンスの位置を立体的に把握する空間認識能力も必要となります。

さらに蹴り出すスペースには、キッカーを信じて走り込む味方がいなければいけません。

体格に勝る国際レベルのディフェンスを突破していくには、そういった高い技術が求められていくように思います。

 

大会1日目を振り返って感じたこと


各地域の厳しい予選を勝ち上がってきただけあり、どのチームも自分たちのスタイルを持っていました。

強豪チーム同士の試合は、得点が入らなくても随所にハッとするシーンがあり、観ている側も飽きることがありません。

 

個人的には、その中でもナイジェリア選抜(その後優勝)とトヨタ・タイランド(その後3位)が印象的でした。

ナイジェリア選抜は、対人の強さと攻守の切り替えの早さ。

トヨタ・タイランドはキックとポジショニングの正確さが優れていたように思います。

 

今後、日本のチームが優勝するには①両足のキック技術の向上、②ビルドアップのバリエーションが必要となりそうです。

正確なキック技術を習得することが、世界と戦う時に感じる身体面のハンデをカバーしてくれるのではないかと思います。

(ナイジェリアがトレセン大阪を破った2本のシュートも、PA外からの豪快なミドルでした)

 

1日で11試合を観戦して、各チームのオフザピッチの様子やチームが持つ雰囲気も肌で感じることができました。

今まで名前しか知らなかったチームがほとんどでしたが、実際に見たことで少し身近な存在になった気がします。

近い将来、ワールドカップに出場する選手もいるはずなので、「あの時に見た選手だ!」と言えるようにしておきたいと思います。

 

ありきたりの言葉ですが、ボールひとつで様々な国の子供や保護者が喜んだり、哀しんだり、交流を持てるのは素晴らしいことです。

残念ながら初の開催国優勝とはなりませんでしたが、日本の子供たちにとっては、海外チームが単なる憧れのチームではなく、次こそ倒すべき相手になったように思います。

2年連続大阪であったため、次回は違うところになりそうな気もしますが、機会があればまた観戦しに来たいと思います。

 

大会結果・最終順位はこちら(大会公式HP)

【保護者向け】U-12ジュニアサッカーワールドチャレンジ2019って、どんな大会?

日本で一番のアスリートを決める最高峰の戦い

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