「中学でサッカーを続ける友達が少ないから、ジュニアユースのことが分からない」
「勉強と両立して欲しいけど、どっちのレベルも落として欲しくない」
「サッカー推薦で進学希望する子供って、実際どれくらいいるの?」
中学校入学を控える子供がいるお母さんなら、このような疑問や不安を抱えている方は少なくないように思います。
実際、小学生世代に比べると中学生のサッカーに関する情報は、極端に少なくなる印象があります。
これは、競技者が減ると同時に、保護者の引率する機会が極端に少なくなるため、情報を発信する人が限られるという理由があります。
そこで今回は、関西を中心とした中学生年代のサッカー環境について、サッカー未経験のお母さんでも分かるように解説してみたいと思います。
こちらで触れるのは、大阪をはじめとした関西エリアの情報で、一般の保護者が情報収集可能な範囲となります。
紹介する学校や大会の種類は随時更新されますので、最新情報は各学校、サッカー協会のHPでお調べください。
部活サッカーとクラブチームって、どれくらい実力差があるの?
中学でサッカーを続けたいという子供がいる保護者にとって、一番気になるのはこの話題だと思います。
クラブチームに行きたいと思っていても、「あそこの中学のサッカー部、今度全国大会に行くらしいよ」と聞くと、実際どっちが強いのかなとなりますよね。
結論から言うと、『ジュニアユースと呼ばれるクラブチームの方が、学校の部活チームより強い』場合が多いと思います。
大きな理由は、部活サッカーは選手を集める地域がクラブチームより限定されるからです。
公立中学は、原則として校区内に住んでいる生徒でチームをつくるため、上手い選手を多く集めることが難しくなります。
一方のクラブチームは、都道府県全域、または県をまたいで入団する選手もいるので、上手い選手が集まりやすくなります。
ただし、静岡のように公立中学でもサッカーが盛んな地域もありますし、大阪市では、校区外であっても希望する中学に通うことができる制度(大阪市学校選択制)がありますので、ジュニア時代の仲間と同じ中学に入ってサッカーを続けるという方法もあります。
また、サッカーの強い私立中学に通うという方法もありますので、必ずしもクラブチームへ入団することが良いとは限りません。
ちなみに、2022年度 大阪中学校サッカー選手権大会を制した東海大仰星中学は、クラブチームを含めたU-13年代の公式戦(フューチャーリーグ大阪)の3部に所属しています。
ジュニア年代でチームの主力だった選手は、フューチャーリーグの1部、もしくはその上のカテゴリーであるヤマトタケルリーグに属するクラブチームに行くケースが多いようです。
中体連に所属する部活チームと、クラブチームが対戦することは稀ですが、こういった結果をみると実力差がどれくらいあるのかを調べることができます。
したがって、ママ友が言う「あそこ全国大会いくらしいよ。あそこは大阪ベスト4らしいよ」という話は、どのカテゴリーに所属するチームなのかを知っておかなければなりません。
言葉だけを鵜呑みにしてしまうと、間違った認識をして「思ってたのと違う!」となる可能性があります。
部活サッカー(中体連)の強豪校ってどんなところ?
次に、部活サッカー(中体連)の強豪校について説明していきます。
中学の部活をベースに行うサッカーチームは、日本中学校体育連盟(中体連)に所属します。
そのため、学校のサッカー部に入った場合、街のクラブチームやJクラブと試合することはほとんどなく、同じ中体連のチームと試合をすることあ多くなります。
しかしながら、中体連にもサッカー協会が主催する全国大会があり、全国大会出場、さらには日本一を目指すことができます。
2022年の全国中学校体育大会は浜松開誠館中学が優勝、静岡学園中学が準優勝と、静岡勢が強い年でした。
どちらも、私立の中高一貫校であり、高校サッカーでも強豪校として有名です。
特に静岡学園は、『静学(しずがく)』という愛称で、サッカーの強豪校として知られています。
高校年代で一番の大会である全国高校サッカー選手権でも優勝経験があり、プロのJリーガーを数多く輩出している学校です。
また、過去の大会においても青森山田や神村学園など、地方の有名私立中学が優勝しています。
『サッカーが強い学校』『全国大会優している』という実績は、少子化で生徒集めが年々厳しくなる学校にとって、なにより欲しいブランドとなります。
特に地方の私立学校は、話題になりやすいスポーツに資金をかけ、実績をつくることで生徒の集客を強化している側面があることを知っておきましょう。
ちなみに、大阪大会の優勝校として紹介した東海大仰星中学や、ベスト3に入った近大附属中学や賢明学院中学も中高一貫の私立中学です。
サッカーに力を入れている私立中学は限られており、通学や学費等の心配はあるものの、内部進学で受験の負担が減るメリットを考えると、中学高校年代を通して全国大会を目指せますし、保護者にとっても安心感がある環境と言えそうです。
公立中学の部活サッカーって、どんな感じ?
一方で県立や市立などの公立中学は、どんな感じなのでしょうか?
放課後のグラウンドで、ボールを蹴って練習をしている姿を見たこと見たことがある方も多いと思います。
基本的には保護者世代が経験した部活と同じであり、平日に練習をして、休日に試合をするというパターンが多いようです。
学校のグラウンドで練習をするため移動時間が少なく、自宅から近く安心感がある、というのが部活サッカーの最大のメリットです。
移動を少なくすることで時間を有効活用し、部活が終わってから塾に通うということも可能です。
「子供がサッカーを続けるかどうか迷っている」「他の習い事や塾をこのまま続けたい」というのであれば、部活サッカーは最適な環境であると言えます。
デメリットとしては、
- 選手のスキルや人数にムラがあり、未経験者も在籍している
- クラブチームに比べると、試合や大会が少ない
- 使用する施設の充実度が低く、他部活との兼ね合いで使えない時がある
- チームからの情報発信が少ないため、活動の様子が分からない
が挙げられます。特に施設面は、私立中学やクラブチームより劣ると考えて良いでしょう。
当然ながら、施設の充実度の違いは、サッカーが上手くなることを考えると大きいように思います。
公立中学は基本的に土のグラウンドですが、クラブチームは人工芝や場合によってはプロが使用する天然芝のピッチでプレーすることができます。
丁寧に手入れされた天然芝のピッチは本当に気持ちがいいですし、プレーする選手のパフォーマンスも全然変わってきます。
また、土のグラウンドに比べてクッション性が高く、骨折や関節を痛めるリスクを防止する効果があります。
公立中学の中には、グラウンドの広さが足りなかったり、地面の一部が盛り上がったり斜めになっていたり、他の部活が使っていたりと、少し危険に感じることもしばしばです。
また、部活サッカーは、チームや保護者間の連絡網がないため、だんだんと子供のサッカーから疎遠になっていく保護者が多いように思います。
子供のサッカーの応援を介して、色んな人と交流するのが楽しみだった方にはもの足りない環境となりそうです。
体や周辺環境が大きく変化する時期ですので、公立中学だから安心と思わず、実際にグラウンドや練習している様子を観に行ったり、活動している選手や保護者に聞いてみると良いのではないでしょうか。
ジュニアユース(クラブチーム)って、どんな感じ?
一言で言うと、ジュニアユース(クラブチーム)は、それぞれの地域の上手い選手が集まってできたチームです。
基本的には、プロサッカー選手を目指す子供たちが所属していて、OBには現役のプロ選手がいるチームもあります。
サッカーが好きで好きでたまらないという子供にとっては、毎日が刺激のある最高の環境であると言えます。
クラブチームの活動は学校と別であるため、選手は学校が終わってから練習場所まで通うことになります。
練習場所や開始時間は、曜日によって異なることが多く、学校の部活に入ることはできたとしても、活動はほぼできないと思っておきましょう。
練習がある日は、学校から帰宅して急いでご飯を食べ、練習場所へ向かいます。
自転車で行ける範囲なら良いですが、一部の子供たちは電車やバスを乗り継いでくることも珍しくありません。
平日の移動は基本的に子供だけで行いますので、チームを選ぶ際は子供が一人で通える範囲であるかどうかが大きなポイントになります。
もちろん保護者にとっても、学校から帰ってきたときの食事、練習後の食事、お風呂、練習着の洗濯、通院含めた体のケアなど、、慌ただしい日々となります。
帰宅時間が9時10時を過ぎることも珍しくありませんので、テスト期間が近付いた時には、部活以上に勉強と両立することが求められます。
また、試合会場が電車やバスで行けない場所にあることがあるため、休日は保護者の送り迎えが必要となる場合も多いです。
高いレベルでサッカーを学べる環境ではありますが、どうしても保護者の協力がないと続けるのが難しいと言えます。
クラブチームのデメリットとしては、
- 部活と比べて移動に時間がかかり勉強との両立が難しい
- 学校の友達と部活をしたり休日に遊ぶ時間がない
- 食事や送り迎えなど保護者の協力が必須
- 子供のスケジュール次第で休日の予定が変わる
といった、シビアな時間管理であったり保護者の負担増が挙げられます。
クラブの所属するリーグにもよりますが、関西ではサンライズリーグ、アドバンスリーグレベルであれば、概ね所属選手はスポーツ推薦での進学を希望していると考えて良いでしょう。
また、全国のサッカー強豪高校も、近隣クラブチームを中心にスカウト活動を行っており、またクラブOBが所属している実績があれば、より声が掛かる確率が高いと言えます。
その後の進路は、中学年代に選ぶチームで大きく変わる
サッカーをする子供にとって、『自分の進路を決める』タイミングは思っているよりも早く訪れます。
その最初が中学年代のチームを選ぶ小学校6年生のタイミングです。
中学の所属チームだけですべてが決まるわけではありませんが、その後の高校への進路を決める大きな要素となります。
中高一貫校は高校受験がないため、サッカーに専念できる期間が長くなりますし、クラブチームはスポーツ推薦で進学する確率が高くなります。
部活は学校や地元の仲間と過ごす時間が増え、時間に余裕のある中学生活を過ごすことができるでしょう。
その選択が良かったと思えるのはまだ先ですが、あの時こうしておけばよかったと思うことがないように、親子でしっかりと話し合って進路を決めることが大切であると思います。
小学生のまだまだ幼い子供に「進路どうするの?」「もっと真剣に考えて!」と言うのは酷かもしれませんが、考え方や生活リズムに合わないクラブを選んでしまうと、親子で辛い時間を過ごすことになってしまうからです。
そのためには、どの選択にもメリット、デメリットが存在することを知っておくことが必要です。
「すごく迷ったけど、こっちのチームを選んでよかった」
「あんなに楽しかったサッカーが、いつの間にか嫌いになってしまった」
ジュニアユースという謎に包まれた3年間を充実した期間にしていくには、子供の未来を想像し、後悔しない選択をすることが大事であるように思います。