子供がキーパーをしているのを見ると、失敗しないか心配でドキドキしてしまう。
そんな感情を押し殺しながら、試合を観戦したことのある方は多いのではないでしょうか。
サッカーで自陣のゴールを守るキーパーは、唯一手を使える特殊なポジションです。
自分の顔くらいある大きなグローブを付けて、必死でゴールを守る姿は大人を惹きつけるものがあります。
画面越しに映るキーパーは、その多くがピンチの時であるため、ボールがない時に何をしているのかが分かりにくい存在です。
今回は、子供がキーパーで出場する前に、知っておきたい大事なことについて考えてみたいと思います。
キーパーは必ず回ってくる
ジュニアサッカーでは、選手が希望するしないに関わらず必ずキーパーをする機会が回ってきます。
色々なポジションを経験することが、サッカーを理解することにつながっているからです。
体が小さいとか、性格が向いていないとか、ルールを知らないとか、そんなことは関係ありません。
そのため、いつでもキーパーができるように準備をしておく必要があります。
もし、子供がサッカーを始めたら、フィールドプレーヤーの練習だけでなく、キーパーの練習もしておいたほうが良いでしょう。
普段から遊びの中で経験しておくと、いざという時にも安心して観ていられると思います。
キーパーはポジショニングが大事
キーパーは、ポジショニング(立つ位置)がとても重要です。
ジュニア世代はシュートが上手い子はほとんどいないので、良いポジションが取れていれば高い確率でシュートを止めることができます。
もし子供がキーパーをしているなら、ボールに対して良いポジションを取っているかを確認します。
良いポジショニングのコツは、ボールとゴールを結んだ線上に立つことです。
そんなの簡単だよね、と思うかもしれませんが、ボールは常に動いているので、ゴールを背にした状態で良いポジションを取るのはとても難しいのです。
ボールに集中するがために、いつの間にかゴールを大きく開けて立ってしまう訳です。
時々ゴールポストを触りながら守備をしている選手を見かけますが、あれはゴールを触ることで自分の位置を確認している証拠です。
目はボールに集中しながら、手でゴールポストを触って自分のポジションを確認する。
これができるようになれば、失点がかなり減るようになります。
もし動画を撮る場合は、ゴールの後ろから撮影して、ボールとゴールの線上に立てているかを見てあげると良いと思います。
キーパーは動かないことが大事
プロサッカー選手の試合を観ていると、キーパーがゴール前を飛び出してシュートブロックをしに行く姿を見かけます。
ジュニアサッカーでは、シュートを打たれそうになると前に飛び出していく選手がいますが、できればギリギリまで動かないよう練習します。
なぜ動かない方が良いかというと、前に出るとキーパーの特権である手が使いにくくなるからです。
前に動きながらキャッチできる範囲は、止まったままキャッチできる範囲より狭くなりがちです。
そのため、相手がシュートを打つなと思ったら、できる限りその場にとどまってシュートを手で止めることに集中します。
真正面のボールをしっかり止めることができれば、キーパーとしての役割を最低限果たしていると言えるからです。
まずは、正面のボールを止めれるようになって、その後に左右に少しずつ守備範囲を広げていきます。
キーパーに慣れていない選手の場合、先に動いて正面のボールを取れなかったり、簡単なボールをキャッチし損ねて押し込まれるケースが意外と多かったりします。
シュートを打つ選手の心理としては、正しいコースにじっとされることが一番嫌なので、最後まで動かないキーパーはとても嫌な存在になります。
プロの試合で観るゴール前の1対1やPK勝負は、シュートを打つ選手とキーパーがどっちが先に動くかの我慢比べでもあるのです。
ゴールキックの後は失点が増える
ジュニアサッカーでは、ゴールキックのミスによって失点する光景をよく見かけます。
相手選手もキーパーのキックが飛ばないことを知っているので、なるべく前で取ってシュートを打とうとしているからです。
そのためゴールキックをする場合は、なるべくサイドに蹴り出して、すぐに正しいポジションを取ることを心掛けます。
もしサイドに蹴り出したボールを取られたとしても、シュートコースが狭いため、ゴールになる確率が低くなるからです。
ゴールキックをした後に、すぐに正しいポジションを取る。
この練習をすることで、失点がかなり少なくなるように思います。
キーパーが手に持ったボールをキックするパントキックも同様です。
なるべくサイドや前線に大きく蹴り出して、すぐにシュートを打たれないようにしていきましょう。
パントキックはゴールキックよりも前に出て蹴りますし、キックする場所が毎回異なるので、その後のポジショニングが乱れやすくなります。
ゴールキックやパントキックをした後に、良いポジションがしっかり取れているか。
観戦する保護者は、こういった子供たちだけでは分かりにくい点を観てあげると良いと思います。
強いシュートは両手で弾く
高学年になると、ゴール上部へ強いシュートを打つ選手が多くなります。
ゴール上部は、キーパーの手が届きにくいことを知っているからです。
特に背が低い選手は、相手チームが狙って打ってくるので注意が必要です。
ゴール上部へのシュートは、体制が不安定になりやすいので、キャッチミスをしたりハンブルしてゴールになることがよくあります。
一見簡単に取れそうなボールであっても、風が吹いていたり無回転になっていると軌道が変化する場合があります。
こうしたキャッチミスによる失点を減らすには、一度両手で弾いたボールをキャッチする、もしくはゴールの外に弾き出す練習をすると良いと思います。
シュートをキャッチするだけでなく、ゴールの外へ弾き出すこともキーパーに求められる重要なテクニックです。
キーパーは一番大きな声を出そう
キーパーは一番大きな声を出さなければなりません。
なぜなら、一番後ろから味方全員の動きを見ることができるからです。
声を出すことを恥ずかしがっていては、たとえ失点していなくてもキーパーの役割を果たしているとは言えません。
「ナイスボール!」
「シュート打っていこう!」
「◯番マークついて!」
キーパーは、声で味方を盛り上げるだけでなく、リスクをいち早く感じて指示を出せるポジションにいます。
そのため、キーパーの声が大きく、一番声を出しているチームは軒並み良いチームであることが多いです。
このことを踏まえると、プロの試合を観に行く場合は、メインスタンドやバックスタンドではなく、キーパーの目線に近いゴール裏から観戦してみると良いかもしれません。
あえて距離感の掴みにくい縦方向の視点から、ポジショニングや声の出し方を観察するという方法です。
そういったキーパーならではの目線や役割を、実際に体験しながら少しずつ理解してみてはいかがでしょうか。
今回はサッカーをする子供なら一度は経験するキーパーについて、保護者の立場から見るべきポイントを考えてみました。
こうしてみると、なるべく行かないで欲しいと思っていたキーパーというポジションが、一番後ろから仲間をサポートできる頼もしいポジションであることがわかります。
そして、チームがピンチになった時に、ナイスセーブを連発するキーパーは光り輝く存在になります。
もし、子供がキーパーで出場することになったら、観戦する保護者は「早く終わって欲しい」「できれば行かないで欲しい」と願うだけでなく、キーパーというポジションでしか経験できないものが何かを伝えて欲しいと思います。