小学校のの夏休みや冬休みに出る宿題の定番、読書感想文。
計算ドリルや漢字練習帳と異なり、答えが決まっていない宿題はどのように進めたら良いか分からないことがあります。
「とりあえず文字数を埋めるために書いてそう」
「ありきたりな内容でまとめているな」
出来上がった感想文を見た時に、こんな風に感じることもしばしばです。
今回は子供が苦手な読書感想文を、先生や保護者が読みたくなる文章にするコツについて考えてみました。
読書感想文のめあてって、一体何だろう?
読書感想文は学校の宿題としてよく出されますが、読書感想文が好きな子供ってあまり聞いたことがありません。
読書感想文のめあてって、一体何でしょうか。
私たちは、『本を読む機会をつくること』と『自分の考えをまとめて、文章にする能力を身に付けること』が、読書感想文のめあてと考えています。
ひとつ目の『本を読む機会をつくる』は、休みの間に1冊くらい本を読みましょうということです。
読書の大切さは言うまでもありませんが、文字や挿絵の少ない情報から主人公の気持ちやその場面を想像する力は、子供のうちに身に付けておきたい能力です。
ふたつ目の『自分の考えをまとめて、文章にする能力を身に付けること』は、社会に出た時に様々な場面で役に立ちます。
中学や高校の受験、就職活動の履歴書や面接、仕事の資料作成や会議など、人生の節目となる重要な場面では『考えを文字にまとめる能力』が役立ちます。
使用する漢字や熟語、文章構成、場面の描写から、書き手の知性をうかがい知ることは容易です。
近年では、SNSやブログが人格を形成する一部になっているので、リスク管理としても文章で正しく伝える能力を身に付けておいて損はなさそうです。
しかしながら、課題系の宿題は提出が任意になっていたり直接成績に影響しないことが多く、とりあえず提出することが目的になりがちです。
また保護者にとっては、正解がひとつでなかったり、関わりすぎると保護者がやっているような気分になるので、口出ししにくい宿題とも言えます。
学校で表彰されると、自信がでる
次に、読書感想文の目標を決めます。
読書感想文は良い悪いの基準が見えにくいため、ゴール設定があいまいになりやすいからです。
ここでは、学校で表彰されるレベルになったらひとまず合格と考えます。
表彰されるレベルとと聞くと「難しそう」と感じるかも知れませんが、学校の読書感想文は市や区のコンクールに提出していることが多く、良い内容であれば高い確率で表彰されることがあります。
コンクールに提出される作品は、多くの文学や書物に触れて来ている先生が選者であるため、一定の水準に達したと考えます。
もちろん、特選や優秀賞などはハードルが高いですが、入選や佳作はある程度の人数が選ばれて表彰状が届くので、子供にとっては自信につながるように思います
学校生活で読書感想文を提出する機会は、少なくとも年数回あります。
一生で十数回の経験かもしれませんが、自分の書いた読書感想文がそれを読んだ人たちに評価され、賞状という証で返ってきたという記憶は、なんとなくその後の人生に影響してきそうです。
友達が並んで拍手をする中、顔を赤くしながら起立し、通路を歩いて前に出て、校長先生から賞状を受け取る。
たった1、2分の出来事ですが、子供にとっては自分自身を誇らしく感じる瞬間であるように思います。
文章を書くのは、時間がかかる
誰が決めたわけでもないのに、読書感想文ってなんとなく休みの最後の方に残しがちです。
計算ドリルや漢字ドリル、配布されたプリントをやり終わって初めて、さあ何を読もうかなと本を探すところから始まります。
ところが、いざ書こうと思うと本が決まらなかったり、本を読む気分にならなかったりします。
さらには、指定図書や課題図書の場合だと、図書館で借りられていたり本屋で売り切れていたりするため、時間がなくなってバタバタで書くことになります。
皆さんも経験があると思いますが、時間に追われている中で文章を書くというのはとても難しい作業です。
特に読書感想文のような想像を膨らませながら自分の意見をまとめる行為は、早く完成させたいという気持ちがはやると無難な内容にまとめがちです。
できれば、気持ちに余裕のある休み前半に課題図書を用意し、上手く書けない場合は違う図書に切り替えるくらいの余裕があったほうが良いと思います。
いきなり原稿用紙に、書かない
いきなり原稿用紙に書くと、段落や句読点を間違ったときに最初の方まで戻って消さないといけなくなります。
子供は書き直しながら文章を考えていくため、気が付くと用紙がボロボロになっていることもしばしばです。
できれば、提出用の原稿用紙は使わず、白い大きな紙や黒板(ホワイトボード)のような何度でも消したり書き加えたりできるものに下書きするのがお勧めです。
文章を下書きしながら漢字や文章の間違いを確認したり、文字数を調整すると原稿用紙に書いた時にきれいに仕上がります。
タイトルは枠外に書く、名前は下詰めで書く、段落はひとマス開けるなどの作文ルールは事前に確認しておきましょう。
書きたいことから、書く
読書感想文でありがちなのが、文章のほとんどが本のあらすじになっていて、肝心の感想が最後の一文だけになっているケースです。
読み手である先生からすると、既に内容を知っている本の要約を再度読まされることになり、面白い文章と感じにくくなります。
できればあらすじではなく、その本を読んだ子供がどんなことを感じたのか、どういうところが気になったのかを本筋にしていくと読み応えのある文章になります。
そのためには、読み終わったあとすぐに一番印象に残ったシーンはどこかというのを文章にするのがポイントです。
そして、なぜそれが一番印象に残ったのか、それを読んで自分はどう思ったのかを文章にしていくと、読書感想文の一番核となる部分が出来上がっていきます。
例え同じ本を読んだとしても、一番印象に残るシーンは人によって異なります。
そういった感じ方や考え方の違いが読書感想文の面白いところであり、そこに醍醐味があるからです。
上手くまとめようとせず、その時に感じたままを文章にしていく方が、感想が読み手に伝わるのではないかと思います。
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誰かと話しながら、まとめる
考えをまとめながら文章にするという行為は、大人でも難しい行為です。
そのため、いざきちんとした文章にしようとすればするほど考えていたこととのズレが出てきます。
ストレートじゃないというか、なんとなく回りくどくなってしまって、結局無難な文章になってしまうわけです。
そんなときは、保護者が子供に質問しながら子供の考えをまとめてあげると良いと思います。
本を読み終えた子供に、まず保護者が「一番印象に残ったところはどこ?」と質問します。
次に、「なぜそこが印象に残ったの?」と質問します。
最後に「もし、自分だったらどうしていたの?どんなことを考えたの?」と質問します。
そうして、子供が口頭で言った内容を保護者が大まかにメモしておきます。
文頭に軽く本の説明を入れ、メモした内容を順番に文章に変えていくと、起承転結の4段落にまとまった大筋が出来上がります。
ポイントは本全体の説明をするのではなく、自分が気になった部分だけを深堀していくと、主張がはっきりした締まった文章になります。
「え?、こんなところが印象に残ったところなの?」となるかも知れませんが、そのままズンズン進めてください。
一度沼にはまってしまうと、なかなか抜け出せなくなる読書感想文。
次の読書感想文は、いつものやり方を忘れて親子で楽しくトライしてみませんか。
子供の意外な一面が見えてくるかもしれませんね。