「自主練した方がいいよ」
「今度ついて行ってあげるから」
「ほら、一緒に練習しよう」
子供のサッカーが上手くなるために、親と子供で一緒に練習をしている人は多いと思います。
「よし、練習しよう」と言って、ひとりでできる子供はいないからです。
実際に、週末の公園に行くと色んなところで練習している親子の姿を見かけます。
一緒にリフティングやドリブルの練習をして汗を流す光景は、子供がサッカーをしている親にとって一度はやってみたい理想の練習でもあります。
しかしながら、実際に理想の親子練習をするには、思っているより高いハードルがあります。
思い立って練習を始めてみるものの、上手くいかないケースも多いからです。
今回は、親子でするサッカーの自主練習が長続きしない理由について考えてみたいと思います。
自分にとって「長続きするもの」とは
みなさんの中で、毎日のように続けている「長続きしているもの」には何がありますか?
ジョギングやジムに行くといった趣味もあれば、買い物や送り迎えのように用事に近いもの。
お風呂に入るや歯を磨くといった習慣や日課となっているものもあります。
内容に個人差はありますが、それぞれに共通するのは「やらないと気持ちがわるい」「やらないと不都合がある」ということです。
面白いのは「楽しい」「気持ちがいい」というポジティブさより前に、マイナスな感情があったほうが長続きするということです。
そのため、親子でするサッカーの練習も同じく、「やらないと気持ちがわるい」「やらないと不都合がある」というものになってくると長続きしそうです。
他人から見ると「楽しそう」に見える親子の姿は、本人たちにとってはただの習慣になっているかもしれないという事実を忘れてはいけません。
1.練習時間が長いから続かない
親子練習が続かない理由の一番は、練習時間が長いことです。
特に始めたばかりの時期は、親にやる気があるあまり、長時間の練習になりがちです。
はやる気持ちを抑え、意識して短い時間で終わるようにしていきましょう。
どうしても続けたいとなった場合は、練習ではなく遊びとして再開します。
もっと練習をしたいという気持ちを残した方が、次回に繋がるからです。
■練習時間の目安(練習場所への往復移動時間も含む)
幼児から低学年 ~30分
低学年から高学年 30分~60分
1年以上続いた高学年から 60分~90分
2.信用されていないから続かない
親子練習の難しいところは、教える人がコーチではなく親であるという点です。
サッカー経験者やコーチの資格を持つ親であれば良いですが、ほとんどの親はそうではありません。
子供は教える人が素人であること知っているので、納得がいかないアドバイスに聞く耳を持ちません。
「そんなこと言うんやったら自分でやってみて!」子供にそう言われて、何も言えなくなった人も多いと思います。
それでは、技術的な見本を見せれない人や言語化できない人はどうしたら良いのでしょうか。
そういう場合は、迷わず動画を頼っていきましょう。
YouTubeには、全国のサッカー指導者が分かりやすい練習メニューやプレイ動画をアップしています。
やりたい練習を決めて、自分のスキルや好みに合う動画を探して参考にすると良いと思います。
子供にアドバイスする場合は、親の意見ではなく、動画の中にいるコーチの代弁者として接すると説得力が上がります。
また、子供が思うようにできていない場合は、「できてないやん」というだけでなく、練習を撮影した動画を見せながら説明すると良いと思います。
子供が一人で細かく振り返ることはできないので、客観的に自分のプレーを見る練習として効果があります。
3.親が見ているだけだから続かない
「こうやったらいいやん(私はできへんけど…)」
口だけで見ているだけの人に説得力はありません。
できれば、親も一緒に子供と同じ練習をやっていきましょう。
保育園や幼稚園のお遊戯を見ていると、子供たち以上に先生が一生懸命踊っているということが良くあります。
そういった真剣に取り組んでいる姿に共感して、子供たちは頑張ろうと思うからです。
特にサッカー経験がない親は、下手くそでもいいから一緒にやってみるというのが大事です。
誰かに見られていようが関係ありません。
「俺の方が上手くできる」と思って、ボールを取り上げて来たらこっちのものです。
4.天候に左右されるから続かない
「せっかく練習しようと思ったら雨だった」
「練習したいけど、寒いから行きたくない」
サッカーの練習時間と天候には、密接な関係があります。
特に梅雨の時期は、練習や試合がなくなることが増えます。
その後晴れたとしても、地面がグジョっとなっていると練習ができません。
コンクリートやアスファルトは乾きは早いものの、グラウンドと感触が違うので練習には不向きです。
リフティング程度なら良いですが、怪我や事故を考えると、親子練習の場所としてお勧めできません。
できれば、外だけでなく家の中でもできる練習を考えておくと良いです。
天候によって練習をやめるのではなく、練習の内容を変えるということです。
こうして、雨が降った時の決まりごとをつくっておくことが、自主練習を続けるコツです。
5.外に行くのが面倒だから続かない
外に行くのが面倒になることも、続かなくなる理由のひとつです。
公園や空き地など、ボール遊びができる場所が近くにないと、だんだん行くのが億劫になってきます。
最近では、小さい子供向けの公園や、防球設備がない公園は、野球やサッカーが禁止されている場合があります。
また、大きな道路を挟んだ場所や、10分以上かかる場所は行かなくなる理由の方が多くなります。
そして、近年増えているタワーマンションも外に行くのが面倒に感じる環境です。
眺望の良い高層階は、上に上がれば上がるほど、外に出掛ける煩わしさを伴います。
運動着に着替えて、遊びたい気持ちを我慢しながら、エレベーターに乗って公園まで歩いていく。
途中で水筒や携帯の忘れ物に気付いて取りに帰り、またエレベーターを待つ。
これだけでどんどん時間が過ぎていきます。
一回は数十秒、数分の違いかもしれませんが、長い間積み重なると膨大な時間をマンション内の移動や我慢する時間に費やさなければなりません。
もし、子供に運動をさせたいと思っているなら、マンションの低層階か一戸建てに住むことをお勧めします。
6.邪魔が入るから続かない
「さあ、今から練習するぞ!」と思っても、思わぬ邪魔が入る場合があります。
それは「弟妹」「友達」「虫」です。
練習する時に弟や妹がいると、練習の邪魔をしたり退屈で泣き出したりする場合があります。
ひとりで遊ぶのが苦手な子供は、できれば連れて行かない方が賢明です。
また、近所の公園には「友達」がいる場合が多いです。
友達がいると恥ずかしくなったり、遊んでいるのが気になって練習に身が入りません。
そして、一番困るのが「虫」がいることです。
蚊の攻撃を受けながらの練習はなかなか辛いものがあります。
なるべく練習中に邪魔が入らないよう、誰もいない早朝の時間を選んだり、虫除けの対策をしてから出かけましょう。
7.成果が見えないから続かない
成果が見えないことを続けるのは、大人にとっても辛いことです。
自主練習を長く続けるには、『成果を見える化』することが重要になります。
多くの子供たちにとって『成果を見える化』できるところは試合です。
試合でいいプレーができたり活躍できると、「練習して良かった」となります。
そのためには、試合で出したいプレーを具体化することが大切です。
マンチェスターシティのような美しいパスやトラップなのか。
ロナウドのような度肝を抜くシュートなのか。
それともメッシのように芸術的なドリブルなのか。
得点を取った、活躍したではなく、練習したことを試合で出せたかどうか。
目標の視点を変えて、『成果を見える化』するだけで自主練習が楽しくなります。
自主練習の内容を表にして、練習したプレーを試合で出せたらシールを貼っていく。
これだけでも『成果を見える化』することができます。
楽しい習慣には『決まりごと』がある
お風呂に入ったり、歯を磨くといった繰り返し行うルーティンや習慣には、『決まりごと』が多くあります。
使うシャンプーや歯磨き粉の種類や、洗い方や磨き方、道具を置く場所がそれぞれ決まっています。
こういった『決まりごと』は、それが少しでも違ってくると不快に感じてしまいます。
同じ時間で、ストレスなくルーティンや習慣をこなすには、『決まりごと』が必要なのです。
そのため、今から親子練習を始めようと思っている場合は、親と子供で『決まりごと』をつくっておく必要があります。
いわば、親子練習をする時のルールのようなものであり、このルールの中で練習するという考えです。
ルールがないと、「楽しい」を感じる前に辞めてしまう可能性が高くなります。
そして、そのルールは、練習の中の気付きによって、日々書き替えられていなければなりません。
親や子供がいう「楽しくない」は、『ルールがないことから起こる意思疎通ができない状態』に起因しています。
もし、あなたが親子練習を始めようと思っていたり、上手くいかないなと感じているなら、紙とペンを手に取って『決まりごと』を考えましょう。
そして、「試合でどんなプレーがしたいか」「どんな選手になりたいか」を聞きながら、子供の将来の姿を想像することから親子練習はスタートするのです。