「最近すごく体が大きくなったね」
「ちょっと会わないうちにすごく上手くなってる」
「だんだん顔つきがお兄ちゃんになって来たね」
ジュニアサッカーを観戦していると、チームメイトがいつの間にか成長していてびっくりする時があります。
いつも見ているはずなのに、頭の中のイメージと実際が随分違っていて、いつの間にこんなに変わっていたんだろうと目を疑ってしまいます。
特に幼さが抜けていく9歳は、入学したばかりで初々しかった1・2年生が終わり、「小学生らしさ」や「その子らしさ」が表れてくる時期です。
世間一般的な「ザ・小学生」が始まるのも、この時期が多いのではないかと思います。
今回は、子供たちが見る見る成長していく9歳という時期について考えてみたいと思います。
9歳の転換期をどう過ごすか
ある作家は、9歳、19歳、29歳、39歳…と、9が付く年齢には節目となる出来事があると言います。
9は0に戻るための転換期で、自分で意識しないまま過ぎていく人もいれば、そのターニングポイントで自ら進む道を選んでいる人もいるそうです。
私たちは、9歳を子供が自我に目覚める最初の転換期であると考えています。
「9歳の壁」という言葉があるように、体格や顔つきに個性が出始め、関心や思考の違いが芽生える時期でもあります。
電車や車が好きな子供、虫が好きな子供、歌うのが好きな子供。
みんなで一緒の遊びをすることが多かった時間から、それぞれが好きなことに時間を過ごすようになってきます。
学校以外で習い事を始めたり、友達だけで遊ぶ機会も増えるため、行動範囲や交友関係が爆発的に増えていきます。
こうした『違い』が出ることで、自分と他の人を比べる機会が増え、優越感や劣等感が生まれてくるのもこの時期です。
家庭環境や考え方に違いがあることを認識し始め、自分や自分の家庭がどういうものなのかを客観的に認識するようになります。
保護者にとっては少し子離れができる時期ですが、子供の内面には大きな変化が起こっている年齢でもあります。
私たちはこの9歳の間になるべく色々な経験をさせることが大切であると考えています。
サッカーをしている子供であれば、近所のサッカースクールだけでなく、少し活動範囲を広げ、違う角度からサッカーに触れてみるのが良いと思います。
自分よりも上手な選手と一緒にサッカーをしたり、多様な指導者と触れ合うことで、自分の実力を知るきっかけになります。
保護者ができる成長のきっかけづくりとは
慣れ親しんだ環境から抜け出す行為は、意図して違いを生み出さなければならず、時に労力や勇気が必要となります。
周りには同じ目標を持つ人や同じ考えの人ばかりではないからです。
しかしながら、いきなり大きく舵を切ってしまうと子供が適応できなかったり、長続きしない可能性があります。
まずは身近な所にあるきっかけづくりから始めてみるのが良いと思います。
- Jクラブの子供向けイベントに参加する
- 地域のサッカー協会の子供向けイベントに参加する
- 近くのフットサル場の子供向けイベントに参加する
- 評判の良いサッカースクールに体験入学する
Jリーグに所属するクラブは、定期的に子供向けのイベントを開催しています。
これはJリーグの規定の中に、地域社会との交流を行うことがクラブとして義務付けられているためです。
現役選手と一緒にプレーできるサッカー体験、お父さんと参加する親子教室、お母さん向けのアスリート料理講座もあります。
第一線で活躍する選手を間近で見ると、足の太さやドリブルのスピード、キックの正確さなど、プロってこんなにすごいんだと実感できます。
また、各都道府県では地域のサッカー協会があり、定期的にイベントを開催しています。
大阪府サッカー協会では、親子サッカー教室や、小学生向けの大会などを主に初心者向けのイベントを中心に開催しています。
参加費無料のイベントも多く、保護者も一緒に参加しやすい内容になっています。
もし近所にフットサル場があるのであれば、サッカースクールが開催する子供向けのイベントに参加することができます。
有名なところですと、クーバー・コーチングではスクール生と一般のチームが争うカップ戦や1対1のトーナメントを行う1対1選手権を開催しています。
ヨーロッパの育成思考を取り入れた老舗のサッカースクールなので、普段の練習にはないトレーニング方法が刺激になるかもしれません。
海外のチームが参加していたりするので、日本にいながら国際マッチを体験できることもあります。
子供がサッカーを始めてしばらく経つと、保護者のサッカーに対する知識も増えてきます。
試合で対戦して興味を持ったり、保護者の評判が良いチームがあれば、実際に見学したり体験入学をしてみてはいかがでしょうか。
公式戦に出ないサッカースクールなら、少年団やクラブチームと掛け持ちをすることができるため、ダブルスクールを検討してみても良いかもしれません。
サッカーを習うのは同じでも、指導者によって練習方法や声の掛け方が全く異なります。
9歳前後は、やりたいポジションやプレーの特徴がはっきりしてくる頃なので、より自分のスタイルに合ったチームを選んでみませんか。
成長のきっかけづくりが与えてくれるもの
9歳の子供たちは、保護者が知らないうちにぐんぐん成長していきます。
言い換えれば、どんな環境であっても自然に成長していくため、現状に不満を感じずに過ごしてしまう可能性があります。
できれば少し負荷を上げながら、その成長できる時期を有意義に過ごしてみたいものです。
子供向けイベントや、体験入学のようなサッカーの遠征を繰り返していくとわかりやすく成長することがあります。
まず、知らない子供たちとすぐに仲良くなる能力が身に付きます。
最初は恥ずかしがったりお互いに様子を見ていますが、ボールを蹴り始めるといつの間にか下の名前で呼び始め、最後には友達のようになっています。
校区やチームを超えた友達ができるのは、成長のきっかけづくりをするメリットであると思います。
こういった所で知り合った友達は他のイベントで一緒になったり、サッカーの試合で対戦することもしばしばです。
サッカーに対する情熱や志の高い子同士、惹かれ合うものがあるようで、後々のチームメイトや親友になっていくかもしれません。
学校関係だけでは交友関係が停滞しがちなので、一期一会的な遊びはとても良い刺激になると思います。
さらには、子供が知り合いになると保護者も話すようになり、住んでいる地域以外の話を聞くことができます。
中には兄弟がサッカーをしている保護者もいて、子供との接し方や教室の選び方に共通点が見つかる時があります。
そんな時は、自分の中で何となくモヤモヤしていたものがさーっと晴れて、「やっぱり間違ってなかったんだ」と安心できたりします。
毎回こんなに上手くいくわけではありませんが、サッカー遠征をしていくと時々こんなうれしい出来事に出会います。
「9歳はチャレンジする年」と決めてみる。
居心地の良い庭からちょっと抜け出して、隣の庭や少し離れた庭を覗いてみる。
そこにはまだ知らない子供たちや、熱量のある保護者がいて、刺激をもらえたり分かち合えたりします。
優れた指導者に出会いサッカーの楽しさを改めて感じたり、上手い方と思っていた子供が全然通用しなかったり。
そのためには、「9歳はチャレンジする年」と決めて、身近なきっかけづくりに参加したり、いつもと違う休日を選んでみる。
JリーグならJ1だけでなく、J2やJ3、近くにある大学生や高校生の試合にも足を伸ばしてみる。
「なんかつまらなかったな」「面白くなかったな」と思うかもしれませんが、この経験は今後の大事な選択の判断材料になっていきます。
誰かに聞いた情報や検索すると出てくる情報ではなく、自分の目で見て体験した情報を蓄えていく。
そういった失敗や無駄足を繰り返しながら見つけた出会いや経験が、振り返ってみると9歳の転換期になっているように思います。